日本の物理学研究を理解するのに最適の本-「ニュートリノってナンダ?」 荒舩良孝

ノンフィクション

発売日:2017年12月7日

ページ数:135ページ

先日、岐阜県の神岡町に立ち寄りました。

神岡町はニュートリノ観測施設「スーパーカミオカンデ」がある町です。

スーパーカミオカンデの一般公開は1年に1回ですが、道の駅に併設された「カミオカラボ」という宇宙科学館では、カミオカンデの詳細をいつでも知ることができます。

ニュートリノという言葉は聞いたことがあるし、粒子であることは知ってるけれど、あまり詳しくは知らなかったので、早速この本を読んでみました。

130ページ程度で「やさしく知る」という副題がついているにも関わらず、内容的にはとても難しい本でした。

(写真はカミオカンデの水槽に設置されている光電子増倍器)

この本では、ニュートリノや重力波、ビッグバンなど、宇宙に関する物理学についての内容が半分、残り半分は神岡町のスーパカミオカンデに関する内容でした。

ニュートリノという名前を初めて聞いたのは今から10年くらい前で、スイスの欧州原子核研究機構(CERN)のニュートリノ研究で初めて知りました。

その時は「へえ、スイスにこんなすごい施設があるんだー」と思っていたのですが、日本にもカミオカンデというすごい施設があることを後で知り、とても驚きました。

スーパーカミオカンデの前身であるカミオカンデは、1987年に神岡町にある神岡鉱山の地下に建設されました。

カミオカンデは英語では「kamiokaNDE」と表記されるのですが、「kamioka」は「神岡町」、「NDE」は「Nuclear Decay Experiment」(陽子崩壊実験)の略なのだそうです。

今でこそニュートリノ研究施設として有名なカミオカンデですが、最初は陽子崩壊実験の施設として建設されたそうです。

陽子崩壊実験があまり芳しくなかったため、後にニュートリノの観測施設に方向転換するのですが、最初のカミオカンデが今ほどの規模ではないにしても、あれだけの大きな施設を今から33年も前に建設していたことに衝撃を受けました。

その後、大規模な改修工事を経て1996年に現在のスーパーカミオカンデが完成し、現在はさらに上の実験ができる施設「ハイパーカミオカンデ」の建設をしており、2026年から実験が開始されるそうです。

(ネーミングがいい。スーパー→ハイパーになるということは、次は何になるのかな?)

巨大な実験施設を神岡鉱山の地下1000mに建設してることもすごいし、一度建設してそれで終わりではなく、改修工事や新規建設も行っており、ゼネコンに勤めていた私としては「どんだけすごいプロジェクトだよ。。。」と唖然としてしまいました。

神岡町に一度行ってみて思ったのは、山奥の小さな町ですが北陸電力の発電所などもあり、発電や実験などの施設に向いている土地なんだなということです。

ただ、ものすごい山奥で冬は大雪で閉ざされる町なので、発電所や実験施設の携わる職員や研究者は大変だろうなあと思いました。

アクセスもかなり大変です。

しかし、ニュートリノという未知の粒子について大々的な実験が日本では行われており、そのためのすごい施設もあり、ノーベル物理学賞の受賞者も日本にはいることを考えると、日本の物理学研究はすごいんだなーと改めて思いました。

「カミオカンデって何?」「ニュートリノって何?」と思っている方にはちょっと難しいけれどおススメの本です。

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