人形と人間のただならぬ関係を知るのに役立つ本-「人形は人間のなんなんだ?」菊地浩平

エッセイ

発売日:2024年12月26日

ページ数:192ページ

NHKラジオ講座「こころをよむ」(2025年1月~3月)のテキストです。

2022年に著者である菊地先生が同じNHKラジオ講座「こころをよむ」で「人形と人間のあいだ」というタイトルでお話なさっていました。

その続編になります。

続編ですが、前の講座を知らなくても十分に楽しめます。

ぬいぐるみやリカちゃんなどの着せ替え人形、日本人形など、ぬいぐるみや人形が好きな人にはとても興味深い内容です。

私は子供の頃からぬいぐるみが大好きで、大人になった今もぬいぐるみを大事にしています。

2022年の放送では主にぬいぐるみや日本人形などの「ザ・(まさに典型的な)人形」をテーマに扱っていましたが、今回の内容は多岐に渡ります。

前回の放送では「大人になったらぬいぐるみを捨てるべきなのか?」が1テーマとして取り上げられていましたが、「大人になっても心身のバランスを取る1手段として、ぬいぐるみは必要」と思っている私にとっては満足のいく内容でした。

前回の放送から2年半程度経っていますが、今回のテキストではアクスタ(アクリルスタンド)も人形として含まれていたり、「大人はぬいぐるみを捨てるべきか」の続編が書かれていたり、とても興味深く読みました。

少子化で子供が減っているのにぬいぐるみの売り上げは右肩上がりで、その理由として「ぬい撮り」(旅先などでぬいぐるみと一緒に写真を撮る、ぬいぐるみ単体で写真を撮る)ことが流行っていたり、「推し」(自分が好きなアイドルやアニメキャラなど)のぬいぐるみが売れているのだそうです。

ぬいぐるみは子供のおもちゃと思われていましたが、今は「ぬい撮り」や「推し活」でぬいぐるみを持つ大人も増えているそうで、たった2年で「大人がぬいぐるみを持つ」ことに対する状況がかなり変わってきていることに驚きました。

また、「人形」というと、ぬいぐるみのようなふわふわしたものやリカちゃんのような着せ替え人形などの「立体的な」ものを想像しますが、ここ数年はアクスタ(アクリルスタンド。アクリル製の板に好きな芸能人やアニメキャラがプリントされているもの)が人気で、これも「ぬい撮り」と同じように旅行先などで写真を撮ったり人形のような扱いになっているそうです。

ぬいぐるみや着せ替え人形よりも気軽に持ち運びができること、バッグやポケットなどに忍ばせておいて「お守り」のような役割を担っていることが人気だそうです。

アクスタがそこまでさまざまな役割を担っているなんて思いもしなかったので、とても驚きました。

また、人形を巡る状況なんて2年前とそんなに変わらないと思っていたのですが、ぬい撮りやアクスタの人気など激変していて驚きました。

アクスタの意外な利用法(?)として、故人の写真をアクスタにプリントして遺影にしているという人もいるらしく、びっくりしました。

自分が思いつきもしなかった活用法や流行があるんだなあと改めて思い知らされました。

人形と人間の関係性や文化、心理的な影響まで網羅して解説してあるこの本は、ぬいぐるみ好きや人形好きの人だけでなく、教養としてさまざまな観点から人形文化を理解する1冊になると思います。

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