こんな島がつい最近まで日本にあったことに驚愕する本-「売春島」 高木瑞穂

ノンフィクション

出版日:2019年12月17日
ページ数:280ページ

先日、テレビをたまたま見ていたら、三重県の渡鹿野島の特集をやっていました。

私はこの島について全く知らなかったのですが、この島はつい最近まで「売春島」として有名だったそうです。

は?売春島?

いくら地方の離島だからって、そんな堂々と売春産業をやってる場所なんて、この時代にあるわけないだろ?と思ったのですが、調べてみると今でも細々と売春産業が続いているとのこと。

東海地方出身の知人男性の聞いたところ、

「俺が若い頃に40代50代の男性が団体でツアー組んで行っていたし、今はだいぶ廃れたけど、つい数年前まで売春島に行ってた人もいるよ」

とのこと。

マジか。そんな場所、この現代にあるのか?

どんな経緯で地方の小さな離島が売春産業のメッカになったのか興味があって、この本を読んでみました。

都鹿野島は古くは江戸時代から船の避難、風待ちの港であり、その時に船乗り相手の売春で発展しました。

その後、1960年代からどんどん売春婦が増えていき、置屋も増えていきました。

表向きはスナックや居酒屋の形を取りながら実際は売春の斡旋を行っていたそうです。

ヤクザが表立って仕切ってることはなかったようなのですが、複雑にいろいろな利権が絡み合い、全国的にも口コミで「売春島」の噂が広がり、どんどん売春産業が発展していきました。

警察も売春は違法だけど、ある程度目をつぶっていたし、島の住民も売春で街が活気づけば旅館や置屋に隣接する食堂や商店が潤うので、特に排除の流れはなかったようです。

2000年頃から売春産業からのクリーン化を目指して流れが変わり、その頃から売春産業が廃れてきました。

決定的だったのは2016年に行われたG7 伊勢志摩サミットで世間からの注目が集まり、警察からの売春一掃の動きも強くなり、一層、渡鹿野島の廃退が進んだそうです。

長年に渡り売春で潤ってきて、全国的にも「売春島」として有名になってしまった渡鹿野島の悪いイメージはなかなか払拭できず売春産業に代わる観光資源もないので、クリーン化を進めて20年経った今でも、島の廃退は進んでいます。

島に住む住民はいますが高齢化が進んでいるので、今後どうなっていくのかなと思いました。

売春や性産業はデリヘルなどの多様化が進んで今はどこでも利用可能な時代です。

そんな中で地方の離島が売春産業だけで最近まで成り立っていたということに驚きました。

いろいろな事情や歴史が重なり売春産業だけで成り立つ島ができてしまったことにも驚きでしたが、日本にもまだこういう世界があったんだということに驚きました。

この本は緻密な取材を元に書かれたノンフィクションで非常に良く書かれた本でした。

日本にこんな島があったことにも驚きですが、売春の歴史の移り変わりもよく分かり興味深い本でした。

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