アンパンマンの原点が分かる本-「やなせたかしの生涯」梯久美子

ノンフィクション

発売日:2025年3月5日

ページ数:272ページ

2025年4月からNHKの朝ドラ「あんぱん」が始まりました。

アニメや絵本で有名な「アンパンマン」の作者やなせたかし氏の生涯を描いたドラマです。

やなせたかし氏のことはアンパンマンの作者だとしか認識していませんでした。

アンパンマン自体もそこまで真剣に見たことがなく、なんとなく「顔があんぱんで、おなか空いてる人に自分の顔をちぎって分け与える優しいヒーロー」というくらいしか知りませんでした。

今回、朝ドラのモデルになったことで様々な本が出版されました。

その中で特にこの本は読みやすく、やなせたかし氏の人生を隅々まで解説しているようだったので読んでみました。

この本を読むと、奥様の暢さんとやなせ氏の出会いや結婚へ経緯はかなり違います。

しかしその点以外は忠実にドラマ化されています。

やなせたかし氏は裕福な家庭に生まれましたが、幼い頃に父親が中国で病気で亡くなり母子家庭になります。

弟の千尋は伯父(父親の兄)の家に養子に出され、母親とやなせたかし氏は母親の実家に身を寄せることになります。

やなせたかし氏の母親は美人で女っぷりが良かったことと、女性が一人で子供を抱えて生きていくことが非常に難しい時代であったことから再婚相手を探すことに明け暮れます。

子供を愛していないわけではないのでしょうが、ドラマのほうでも描かれているように自由奔放な性格だったため、やなせたかし氏は幼少期にかなり苦労をします。

その後母親の再婚が決まり、やなせたかし氏は弟の千尋が引き取られた伯父の家でずっとお世話になります。

伯父は医者で叔父夫婦はやなせ氏にも弟の千尋にも良くしてくれ、東京美術学校へ進学するまで学費も生活費も援助してくれます。

そうは言っても、正式に養子に入っている弟の千尋と自分の境遇の違いにコンプレックスを抱いたり、さまざまな葛藤があり、幼少期から青年期までは複雑な気持ちで過ごすことになります。

その後、徴兵されますが、優しく気が弱いやなせ氏は軍隊でも苦労の連続でした。

優秀だった弟千尋が海軍で戦死したり、戦後の混乱など非常に苦労の多い人で、ここまで読むだけで心が痛くなります。

幼少期より絵が上手く、東京芸術学校に進学した経歴も持っているやなせ氏はその後様々な仕事を経験しますが、もともとの希望であった漫画家になるチャンスがなかなか巡ってきません。

ちょうどやなせ氏が絵の仕事をしていた時期は、ちょうど手塚治虫氏が活躍していてなかなかチャンスが回ってきませんでした。

ただ、やなせ氏は非常に多才で雑誌に寄稿したり、詩を書いたり、舞台脚本や構成、雑誌の編集など様々な分野で活躍します。

「アンパンマン」が一躍人気になり、アニメや絵本がロングセラーになっても、さまざまな仕事をした経験や才能は多岐に渡って生かされます。

やなせ氏は幼少期に様々な不幸に遭遇しますが、晩年は幼い時から成りたかった漫画家になることができ、奥様や周りの人にも恵まれます。

小さい頃は苦労が多かった人だけど、晩年は幸せになって本当に良かったとこの本を読んで思いました。

また、やなせ氏が生涯を通して貫いてきた人に対する優しさと命の大事さは見習うべき点だと思いました。

「アンパンマン」の作者だけではない、やなせ氏の多才な面を深く知ることができる本でした。

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