起業本よりも役に立つ、起業時の本髄が詰まった本-「キーエンス解剖」西岡杏

ノンフィクション

出版日:2022年12月22日

ページ数:248ページ

以前勤務していた会社で、設備導入の際にキーエンスさんにお世話になりました。

その時はメインの担当者ではなかったのですが、相見積もりを取ると真っ先に出してくるのがキーエンスさんでした。

何かトラブルがあって連絡すると、すぐに営業さんが飛んでくる。

新規導入する場合は営業さんがデモンストレーションを行ってくれたり、ちょっとしたトラブルの習性はその場でやってくれる。(一般的には技術者を連れて来て修正します。)

とにかく仕事が早い。営業さんが親切。

当時、キーエンスさんのことを良く知らなかったので、外資系企業だと思っていました。

外資系企業の仕事のやり方に似ていたからです。

今回、この本を読んで初めてバリバリの日系企業だと知りました(笑)。

キーエンスという会社が何をやっているのか、会社の規模はどうなのか等、今まであまり知らずに来ました。

キーエンスは工場のFA(ファクトリーオートメーション)に関わる設備機器メーカーさんです。

製品が製造包装される時に不具合が起きていないか、不良品は出ていないか等をチェックするためのカメラやレーザー機能などが搭載されている機器をオリジナルで製造販売しています。

一般的なお店で売られているものではないので、キーエンスという名前を聞いてもピンと来ない人が多いと思います。

製造業のオートメーション化分野では非常に有名な会社です。

売り方は昔から代理店を通さない直接販売。営業スタイルはコンサルティング型営業(提案営業)、受注を受けたら即日出荷。

時価総額はトヨタ、ソニーに次いで第3位。

社内での情報の共有化、素晴らしい社内システムの構築、人材育成、給与の高さなどは業界では超一流です。

確かにキーエンスのやり方は素晴らしくて、これを真似すれば自分の会社も売り上げが上がるのではないか?と思う人もいると思います。

でも、ただキーエンスのやり方を真似しても売り上げを伸ばすことはできない。

この本を読むと分かりますが、キーエンスという会社の根底にある「マインド」が重要なのです。

キーエンスでは社員一人一人が社長であるという意識を持っています。

顧客のニーズの裏のニーズを見つける(顧客の潜在ニーズを見つける)ことを重視し、自分たちの商品に付加価値を与えることを考えています。

明確な目的意識、目標意識、問題意識を持ち、性弱性(人は弱いモノ 怠けたりズルをするものという前提)としてどうやったら合理的な仕事のやり方ができるのかを徹底的に考えています。

この本は単なる「圧倒的に売り上げを伸ばしている企業の話」ではありません。

この本はこれから起業しようと考えている人がぜひとも読むべき本だと思いました。

会社の規模は違えど、キーエンスがやっていることは起業本でよく言われている「お客様の隠れたニーズを掴め」「お客様に喜んでもらえるようなサービスを提供しろ」のお手本だからです。

下手な起業本を読むよりもこの本を読みこむほうがよほど参考になると思いました。

世の中にはたくさんの起業本があります。

私もたくさんの企業本を読みましたが、ノウハウは起業本で学べます。

しかし、起業時の本髄というか、姿勢をきっちり書いている本はなかなかありません。

「起業本」とカテゴライズされている本を読むよりもはるかに参考になる本でした。

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