出版日:2018年8月4日
ページ数:144ページ
ヨーロッパ(特に東欧)の最近のポピュリズムについて書かれた本です。
薄い本ですが、なかなか充実した内容でした。
ポピュリズムとは一般大衆の利益や権利を守り、大衆の支持のもとに既存のエリート主義である体制側や知識人などに批判的な政治思想を指します。
EUでは特に、一部のエリート層がEUの全体主義をそれぞれの国に押し付け、特に経済的に貧しい東欧諸国にしわ寄せが来てそれによってポピュリズムが台頭してきたとのことでした。
確かに、EUの設立目的としてヨーロッパ各国がEUという名のひとつの共同体になることを目指しているのですが、そうは言ってもドイツのような大国と東欧諸国のような小さな国では経済規模も国の状況も違うのだから、どうしても格差やしわ寄せが起きてしまうのが自然なことだと思います。
それを一部のエリート層が現場をきちんと把握せずに、EUに従え!と押し付けてしまえば、その国の人たちが反発するのはわかるなあと思いました。
ポピュリズムの台頭が目に見えて来たのは、ヨーロッパで大量の難民受け入れが始まってからです。
EUのそれぞれの国で平等に難民を受け入れようと言われても、大国と違って経済的に弱い国に難民が来たら反発があるのは当然と、この本を読んで思いました。
ヨーロッパ(EU)というひとつの共同体を目指して進んできたその後というタイトルの本。
それぞれ経済事情も国内の情勢も異なる複数の国が共同体としてひとつにまとまっていこうとすることがとても難しいことなんだなあと思いました。
私はスコットランドに留学していた経験があるのですが、留学当時はスコットランド人が経営してるお店がたくさんありました。
(というか、経営者のほとんどはスコットランド人でした。)
ところが数年前に留学していた街を訪れたところ、お店はそのままなのにオーナーがアラブ系になっているお店がたくさんありました。
「あれ?このお店、スコットランド人のオーナーだったはずなんだけどなあ。。。。」
と何度も首をかしげました。
店員もスコットランド人はほとんどおらず、アジア系や東欧系の店員がほとんどでした。
地元のスコットランド人はどこで働いているんだろう?
ショップの店員やカフェの店員は全部移民で、スコットランド人は仕事がないんじゃないのかな?
と思いました。
このような状況を目の当たりにすると地元の人が苦労してるであろうことは容易に想像ができ、ナショナリズムやポピュリズムが台頭してくるのはよく理解できます。
ヨーロッパはこれからどうなっていくのか、どのように進んでいくのかを深く考えさせられる本でした。
日本もアジアからの移民政策を進めようとしていますが、ヨーロッパの状況をもっと知るべきではないかと思いました。
日本の移民政策を考える上でも参考になる本だと思います。
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