出版日:2023年2月8日
ページ数:256ページ
「不思議の国のアリス」は多くの人がご存じの物語だと思います。
恥ずかしながら私はちゃんと読んだことがありませんでした。
たまたま書店で見かけて購入した人生初の「不思議の国のアリス」がこの本になります。
素敵な装丁、カラーの挿絵に惹かれて購入したのですが、本当に購入して良かったなと思える本でした。
非常に多くの方が翻訳してきた海外文学のひとつですが、日本の文豪である芥川龍之介と菊池寛が翻訳したという点に非常に興味を持ちました。
この本は1927年に刊行された「アリス物語」の完全版になります。
なぜ完全版かというと、当時出版されたアリス物語には誤訳があったり訳が抜け落ちている部分があったそうなのです。
その部分を修正したり、補訳して完全な形として刊行されたのがこの本になります。
約100年前の翻訳ですが、当時の日本人に分かりやすいように様々な工夫が施されており、とても興味深く読みました。
例えば、タルトのことを「お饅頭」と訳してあったり、アリスがお姉さんのことを呼ぶ時に「姉様、姉様」と呼んでいたり、現代とは異なる訳語や言葉のチョイスがされています。
それが古めかしいとか読みづらいわけでもなく、とても情緒的で心に響くのです。
約100年間の翻訳というのは、もっと読みづらいものかなと先入観を持っていたのですが、これがとても読みやすくあっという間に読み終わってしまいました。
もちろん今回の完全版刊行に向けて訳補と注釈をしてくださっている澤西祐典さんが読みやすく工夫してくださったのは言うまでもないのですが、100年前の時代背景や芥川龍之介・菊池寛の翻訳の雰囲気を壊さずにいてくださるのは、非常にありがたいことだなと思いました。
また、最後の注釈では原作者のルイス・キャロルがどうしてこの物語を思いついたのか、改訂版のことなどにも触れていて、「不思議の国のアリス」ができるまでの裏話、この「アリス物語」が「小學生全集」として刊行された際の背景なども書かれており、興味深く読みました。
背景が知って読むと、また違った視点から「アリス物語」を見ることができ、視野の広がりを感じました。
「不思議の国のアリス」はとても有名な海外文学でたくさんの訳書も出ていますが、100年間の雰囲気を感じながら日本の文豪が訳した「不思議の国のアリス」を読むのはとても情緒的だなと思いました。
文豪の息吹を感じながら海外文学を読む。そんな体験をした方におススメの本です。
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