日本人初の弁護士/判事である三淵嘉子が関わった歴史的裁判が良く分かる本-「原爆裁判」山我浩

ノンフィクション

発売日:2024年6月5日

ページ数:265ページ

NHK朝ドラ「虎に翼」をご覧になっている方も多かったと思います。

もうすぐ放送終了してしまうのがとても残念でなりません。

この朝ドラを見たことによって主人公の佐田寅子のモデルになった三淵嘉子氏の自伝や三淵氏が設立に関わった家庭裁判所の歴史の本も読みました。

ドラマをきっかけに様々な派生本を読むチャンスにも恵まれました。

家庭裁判所の歴史に関する本の感想はこちら↓

NHK朝ドラ「虎に翼」で描かれた家庭裁判所の設立について良く分かる本-「家庭裁判所物語」清水聡 | 本とお供 (hon10otomo.com)

今日ご紹介するこの本も「虎に翼」で取り上げられていた原爆裁判に関する本です。

原爆裁判に関する本は今まであまり見かけませんでした。

というのも、近年、裁判所による裁判記録の破棄が問題になりましたが、この原爆裁判も裁判所によって判決文以外の裁判記録や資料のほとんどを破棄されてしまったからなのです。

この本は原爆裁判の判決文を含む、裁判を深堀りした本になります。

この本では、原爆裁判のことだけではなく、原爆開発の歴史、アメリカが日本に対して原爆を使用した経緯、関係者の証言、原爆投下後のアメリカの事後処理のずさんさ等から三淵嘉子氏の経歴、原爆裁判の詳細まで幅広く書かれています。

先ほど書いたように、判決文以外の原爆裁判の裁判記録や資料は裁判所によって破棄されてしまっているのですが、そのこともこの本を読んで初めて知りました。

原爆裁判のことだけを知りたい方にとっては三淵嘉子氏の生涯など裁判以外の情報が多いとは思いますが、それを読むことによって裁判の背景がよく分かります。

三淵氏は原爆裁判で次席裁判官を務めています。

三淵氏はどうしても「日本初女性弁護士」「日本初女性裁判官」という部分が注目されがちですが、このような重要な裁判にも関わっています。

ご自身の著書やインタビューなどで原爆裁判について言及することはほとんどなかったようですが、「原爆投下は国際法違反」という非常に重要な判決を出しています。

(違反ではあるが、被害者の損害賠償権は国内法上も国際法上も認められませんでした。)

しかし、この裁判判決がきっかけで広島長崎の被爆者を救済するための「原子爆弾被爆者に対する特別措置法」が制定され、国際的にも原爆使用が違法であることを被爆国の裁判所が認めて世界に発信したことが世界の原爆使用禁止への流れを加速させていきます。

原子力は非常に高度な技術であるがゆえに、原子力発電所のようなクリーンエネルギーとして生活を快適にするものとして利用するのか、原子力爆弾として戦争の武器として使うのかで全く見方が変わってきます。

この本は広島長崎の原爆投下、被害者に寄り添った判決文を当時の東京高裁判事が出していたことを知る良いきっかけになりました。

今まで原爆裁判自体をよく知らなかったのですが、ドラマを見たことをきっかけに裁判について知ることができてとても良かったなと思っています。

文章も説明も非常に分かりやすく読みやすい本でした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました