出版日:2022年12月20日
ページ数:232ページ
私も含めて本好きな人が「本に関わる仕事」として思いつくのは、出版社の編集者、書店員、図書館司書などが代表的だと思います。
この本は本好きな人の職業選択の幅を広げてくれます。
「書籍修繕」という仕事をご存じでしょうか?
図書館や博物館などにある希少価値のある本や高価な本は簡単に買い替えができません。
でも、経年劣化やさまざまな理由でページが表紙や背が傷んだり、ページが破れたりすることがあります。
そういう本の傷みを修繕する仕事があることを初めて知りました。
今は希少価値のある本や高額な本だけでなく、個人が大事にしている本や思い出の本も修繕してくれるそうです。
この本の著者は韓国の書籍修繕家です。
書籍修繕という仕事がどのようなものなのか、軽快なトーンで興味深く語っているエッセイ本です。
日本にも「本の修理」をしてくれるお店がいくつかあることを、この本を読んだ後に知りました。
著者は韓国ソウルで書籍修繕のアトリエを営む女性です。
韓国の芸術大学で学んだ後、アメリカの大学院に留学。
大学院ではブックアートと製紙を専攻し、その勉強に製本の技術が必要になります。
指導教官の勧めで大学の図書館付属の「書籍保存研究室」で本の修繕の技術を学びながら3年半働き、その後韓国に帰国。
ソウルで書籍修繕のアトリエを開いたという経歴の持ち主です。
この本では書籍修繕という仕事がどのような物なのか、今まで彼女が修繕した本の思い出などが写真と共に書かれています。
修繕前と修繕後の写真があるため、ボロボロだった本が修繕を経てどれだけ綺麗になるのかを目で確かめることができるのもこの本の醍醐味です。
この本ではさまざまな本にまつわるエピソードが書かれているのですが、一番衝撃的だったのは「テープは紙の敵だ!」というエピソード。
表紙やページが破れてしまった時、セロハンテープやマスキングテープで貼ってしまいますよね。
大事なことが書かれているページに付箋を貼ってしまいませんか?
これ、すべてご法度だそうです。
テープの粘着部分が紙を傷めてしまい、破損がますますひどくなるそうです。
書籍修繕家はそういう破れや破損を紙の繊維をほぐしてつなぎ合わせたり、特殊な接着剤を使ったりして修繕するそうなのですが、大事な本であれば自分で勝手にテープで貼ったりせずに修繕に出すのがベストなのだそうです。
「こんな本を直しましたよ!」というエピソードも満載なのですが、そういうエピソードだけでなく、ちょっとしたノウハウや書籍修繕家が使っている道具のことなど、「修繕小話」みたいな話も満載でとても興味深く読みました。
本が好きな人の仕事として「書籍修繕家」という選択肢もあることを、この本では教えてくれます。
日本にも「本の修理」屋さんがいくつかあり、そういうお店でも個人の大切な本の修理を行ってくれるようです。
とても興味深い内容だったので、日本の「本の修理屋さん」についても調べてみようと思いました。
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