「校閲」という仕事をご存じでしょうか?
校閲とは本が出版される際、著者が書いた生原稿をすべて読み、事実が間違っていないか、誤字脱字がないか、ストーリー展開や構成に矛盾がないかなどを確認する仕事です。
この本は現存する出版社「新潮社」の校閲部を舞台にしたお仕事コミックエッセイです。
本の出版に関してはどうしても著者と編集者が話題になりがちですが、本が出版されるまでにはたくさんの方の手が入り、そのひとつが「校閲」という仕事になります。
本のタイトルの「くらべて、けみして」というのは、「校べて(くらべて)」「閲して(けみして)」と書き、校閲の仕事の本質を表しています。
「校閲」という仕事は誤字脱字や文章のつじつまが合っていない部分を確認するだけの仕事だと思っていました。
ところが、この本ではそれだけではない校閲のお仕事について詳しく書かれていました。
誤字脱字のチェックだけではなく、フィクションとはいえ場所や天候、月の満ち欠けなどが実際と異なっていないかなどを細かく確認、訂正までしていきます。
文芸小説などフィクションの校閲でもそこまで事実確認を行っていることに驚きました。
歴史物の場合は実際の古地図で確認をしたり、小説に書かれている年次の天候や社会状況まできっちり調べて矛盾があれば著者に提言を行うそうです。
誤字脱字については、明らかに違っているような表記だとしても、著者が表現方法のひとつとして使っている場合もあり、簡単に「これは誤字だ!」と判断することができないそうです。
原稿上に(元原稿ではなくFaxで送られてきたもの)に赤ペンや鉛筆で指摘事項を書き、著者と校閲でのバトルも勃発するとのこと。
それだけ本を出版するには著者を校閲が真剣勝負で作品をより良いものにして出版していることが、ひしひしと伝わってきました。
誤字なんてAIにチェックさせればいいのに・・・と思っていましたが、そういうことじゃないんだなあ。
校閲部の大量の原稿チェック、調べ物の多さ、確認事項の多さを垣間見て、「校閲」という仕事が本当に大変なものであることが良く分かりました。
私は読書が大好きで年間130冊程度読みますが、こういう苦労を経て本が出版されていることを知り、感謝の気持ちで一杯になりました。
同時に、読書が好きだしいろんな原稿が読める「校閲」の仕事に憧れたことがありましたが、この本を読んできっと「校閲の仕事をしていたら、プライベートで本を読むのが嫌になるだろうな」と思いました。
校閲の仕事の大変さ、さまざまな苦労を垣間見て、決して表には出てこない校閲者の方々の凄さを垣間見る、とても良い本でした。
コミックエッセイなのでさらっと読めます。興味のある方はぜひ。
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