出版日:2024年4月19日
ページ数:328ページ
人生において100%確実に起きることは、「人は必ず死ぬ」ということです。
この本は在宅医療によってどのように最期を迎えるのかを詳細に書いたノンフィクション本です。
京都にある在宅医療の診療所の日々の活動を、診療所の医師やスタッフの思い、在宅医療を受けられている患者さんとその家族の日常と思いを詳細に書いています。
ほとんどの患者さんはがんを患っており、自宅で最期を迎えることを希望した方ばかりでした。
昔から町医者による「往診」はありましたが、やれることは限られていました。
現在の訪問医療はかなり専門的なことまでやってくださることにかなり驚きました。
この本で取り上げられている京都の訪問医療診療所は、患者さんのケアだけではなく家族に対するケアも行っていました。
また、今は行っていないかもしれませんが、この本の取材時には患者さんの願いを叶えるために無給で同行することもあったようです。
例えば自分の最期がもうすぐだと悟った女性は家族と潮干狩りに行くことを希望しました。
本来なら潮干狩りの場所に行くことさえ危ない状況なのに、訪問医療スタッフが同行し患者さんの希望を叶えてあげていました。
体調が悪くなればすぐに駆けつけてくれる診療所で患者さんへのケアが非常に行き届いていると思いました。
この本では基本的に在宅医療の良い面が多く書かれていました。
病院とは違い、在宅医療はできる限り本人の希望に沿った生活を最期の日まで送ることができるように診療所の医師やスタッフが尽力してくれます。
ただ、家族の協力は不可欠で家族が在宅医療を受け入れ患者を支えていくことも必須になります。
人によっては在宅で過ごすことで家族との軋轢が生まれてしまったり、急な痛みや苦しみをすぐに取り除くことが難しかったり、在宅医療の限界もきちんと書かれていました。
病院で最期を迎えるのがよいのか、在宅で最期を迎えるのがいいのか、その人の考え方や向き不向きなどによって左右されるため、一概に「在宅医療が一番素晴らしい」とは言い切れないのだなと思いました。
病院は痛みや苦しみにすぐに対処してくれるけれど、規則に縛られてしまう。
在宅医療はある程度自分の裁量で自由に生活できるが、急変時の不安が残る。
それぞれにメリットデメリットがあり、非常に考えさせられる内容でした。
自分がもし病気で最期を迎える時に、在宅がいいのか病院がいいのか、非常に悩むところだなと思いました。
ただ、全体的に在宅医療とはどのようなものなのか、患者さんはどのように家で過ごしているのか、どのような最期を迎えるのか等、詳しく知ることができました。
そして、今までは「在宅医療、大変そう」と思っていたのですが、患者本人が自分らしく最期を迎えるための選択肢としてはありなのかもしれないなと思いました。
在宅医療のリアルを知りたい方、自分が最期を迎える時には在宅がいいのか、病院がいいのか迷っている方にぜひ読んで頂きたい本です。
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