EU離脱したイギリスと今後のEUの行方が分かる本-「イギリスの失敗」 岡部伸

ノンフィクション

出版日:2019年8月29日
ページ数:224ページ

2022年9月にエリザベス女王が死去されました。

70年以上在位していた女王が死去されたことによって、ひとつの時代が終わり、イギリスは次の時代の一歩を歩み始めました。

2020年にEUを離脱したイギリスは、エリザベス女王という大きな支えも失くし、今後どのように進んでいくのでしょうか?

EU離脱後のイギリスの行方が分かる本です。

2020年1月についにイギリスがEUから離脱しました。

イギリスの離脱については長い間議論がなされ、イギリス議会の混乱ぶりが明らかになりました。

イギリスは一体どこに向かっていこうとしているのか?と疑問に感じるような状況が長く続きました。

この本は2019年8月に出版されているのですが、前半はなぜイギリスがEU離脱の道を歩むことになったのか、離脱決定するまでの混乱ぶりが事細かく書かれています。

後半は離脱後のイギリスの展望、EUを離れてアジア諸国との連携を模索していることなどが書かれています。

ご存じの通り、イギリスはイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドから成り立っている連合王国です。

それぞれが独自の歴史や価値観を持ち、背景も異なります。

EU離脱議論の前から盛り上がりを見せていたスコットランドの独立運動も、歴史や文化、考え方が異なるスコットランドがイングランドからないがしろにされていたことが根本的な原因です。

そのような背景のもとで、スコットランドはイギリス連合王国から独立し、独立国家としてEUに加盟したいと考えていました。

だからこそ、EU離脱を判断する直接選挙ではスコットランドではEU離脱への反対票が多くなりました。

イギリス国内だけでも様々な考え方や価値観があり、総意としてEU離脱を判断するのはとても難しいことだったと思われます。

EU離脱が決まり、実際に離脱したことによって今度イギリスはどのような方向に進んでいくのか、長期的な展望を知ることは非常に大事になります。

この本では悲観的な展望は書かれておらず(批判的な意見はある程度書かれていますが)、どちらかというとイギリスが上手くやっていく、前向きな展望を書かれた本でした。

イギリスのEU離脱について詳しく知ることができる良書です。

近年のオーストラリアのように、中国との関係を見直していこうとする国がある一方、うまく距離を取りながら中国との関係を深めていこう(でも警戒はしていこう)とするイギリス。

シンガポール、マレーシア(もちろん日本も)などと連携して、EUという枠組みに囚われず、世界各国との連携を深めていこうとするイギリスの姿勢は、よく考えられた戦略を垣間見ることができました。

実際にこれからイギリスがどうなっていくのかはまだわかりませんが、この本を読むとEUという枠組みは一定の強みでもあり、一定の視野の狭さを引き起こすものであることがよくわかります。

これだけグローバル化が進んでいる時代において、EU連合という枠が強みになるのか、足かせになるのか、今後は他のヨーロッパ諸国も考えていかなければならないのだろうなあと感じました。

イギリスがEUから離脱したことによって、他のヨーロッパ諸国にどのような影響がいずれ出てくるのか、注視していきたいと思います。

イギリスの離脱を通してEUやヨーロッパ全体の状況や動きがよく分かる本でした。

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