発売日:2020年9月17日
ページ数:238ページ
フィッシュ・アンド・チップスを初めて食べたのは、スコットランドに留学していた時でした。
スコットランド人の友人がテイクアウトのお店で買ってくれました。
その時は特に驚きもなく、普通にフライドポテトと白身魚のフライだなーくらいにしか思いませんでした(笑)。
めちゃくちゃおいしいという印象はありませんでしたが、味は良かったです。
ただ、量が多くて食べきれなくて、他の友人に半分くらい食べてもらいました。
特に印象に残るような凝った料理ではない、一般的なファーストフードとしてのフィッシュ・アンド・チップスの歴史なんて、今まで考えたこともありませんでした。
以前読んだ本にこの本が紹介されていて、ちょっとだけ興味が湧いたので、読んでみました。

ここまでフィッシュ・アンド・チップスに関して調べてある本はなかなかないなと思いました。
著者の熱意がすごい。。。。
著者はイギリスのレスターにあるデ・モントフォード大学で教鞭を取っており、近年は移民と食文化に焦点を当てた歴史研究をしてらっしゃるようです。
フィッシュ・アンド・チップスが以前は労働者階級の食事として、中産階級から見下されていたことについては知っていました。
(そんなこと関係なく食べてましたけどね。)
ただ、食に関しても根底に差別意識的なものがある雰囲気は、ひしひしと感じていました。
フィッシュ・アンド・チップスはもともとは魚のフライとジャガイモのフライが別々に売られており、長い年月をかけていつの間にか組み合わされて提供され、今の「フィッシュ・アンド・チップス」の形になったそうです。
魚のフライはもともとはユダヤ人の食文化だそうです。
1800年代前半までは生の魚を輸送することはできなかったので、生の魚は沿岸地域に住む人や貴族しか食べられない高級食材でした。
一般の人は燻製や塩漬けにした魚を食していました。
なので、魚のフライも一般庶民向けの初期のものは生の魚を使わずに、燻製や塩漬けを使っていたそうです。
その後、鉄道や氷で冷凍する技術が発展して、港から数時間でロンドンなどの都市部に鉄道で魚が届くようになります。
肉よりも魚のほうが安いため、だんだん下層階級を中心に魚のフライを食べる習慣が広がっていきます。
一方、ジャガイモのフライはいつごろから食べられ始めたのがはっきりしないようですが、おそらくフランスやベルギーから「ジャガイモのフライを食べる」という文化が伝わってきたそうです。
当初は別々に売られていましたが、小麦の不作やさまざまなことが重なり、パンよりも安く食べられるジャガイモのフライが魚のフライと共に提供されるようになったのです。
今のように換気設備が良かったわけではないので、魚の生臭さやフライを揚げる時の油臭さなど、匂いの問題はかなり深刻で、魚のフライの匂いが染みついていることで差別される(下層階級だと判断されて差別される)ことにつながっていたようです。
私が留学していた頃はテイクアウト店で安く買える食事という印象が強いのですが、数年前にスコットランドに行ったところ、割と高めのレストランでも提供していて驚きました。
今となってはフィッシュ・アンド・チップスはイギリスを代表する食事になりました。
フィッシュ・アンド・チップスも順調にイギリスを代表するファーストフードの地位にずっと君臨していたわけではなく、1960年代くらいから中国料理やインド料理(主にカレー)のテイクアウトが増えてきて、売れ行きが悪くなったり、閉店するお店が増えたそうです。
その後は、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどのアメリカ系ファーストフードが人気になり、フィッシュ・アンド・チップスは以前ほどの勢いがなくなりました。
ただ、フィッシュ・アンド・チップスの大手チェーン店は少なく、ほとんどが個人経営のお店が代々引き継いで経営しているそうです。
こう言ってはなんですが、魚のフライとジャガイモのフライの組み合わせで、大したバリエーションもないのに、よく生き残ったなあとこの本を読んで思いました。
魚のフライとジャガイモのフライの組み合わせのファーストフードであるフィッシュ・アンド・チップスで、これだけ長く歴史や文化について語ってあるこの本は本当にすごいなと思いました。
フィッシュ・アンド・チップスという料理自体には大した面白みはありませんが、この本は面白かったです。
真面目にここまで調べて語ってあるのがすごい。。。
興味のある方は一読なさることをおススメします。
なんとも面白い本でした。
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