出版日:2023年4月7日
ページ数:208ページ
「インド」と言えば、カレー、ヨガ、ITなどが思い浮かぶと思います。
2023年には中国を抜いて人口世界一になると言われており、若い世代が多い国なのでこれからますます経済発展が見込まれると言われています。
インドは「世界最大の民主主義国」と言われており、日本政府もインドへの投資を呼び掛けています。
「インドは民主主義国というけど、カースト制度もあるし女性へのレイプや差別もひどい。日本や西欧諸国と同じ民主主義とは考えられない部分があるけど大丈夫なのかな?」をずっと思っていました。
そんな疑問に答えてくれるのがこの本です。
非常に分かりやすい文章で簡潔に説明されていて、インドを理解するのにとても良い本でした。
「インドは自由や民主主義信奉者で、中国への脅威も共有している。
若者が多く、経済の発展が見込まれる。
だからインドへの投資を増やし、ビジネスパートナーになるべきだ」
という意見を多く見かけます。
どちらかというと、インドに対して好意的な意見や印象が多く見られます。
日本ではカレー、ヨガ、IT、ガンディーなどへの良いイメージが多いし、日本国内に住んでるインド人も良い方が多いのでそうなるのも仕方がありません。
しかし、ロシアがウクライナに侵攻し戦争が長引いていても、インドは「中立」を貫き、ロシアへの経済制裁を拒否しました。
それどころか、ディスカウント価格になったロシア産の原油輸入量を増やし、経済制裁の抜け道を作っています。
だからといって、ヨーロッパやアメリカなど西欧諸国と対立するわけではなく、のらりくらりと「西欧諸国」と「ロシア・中国」との間をうまく渡っているのです。
これを知っただけでも、「インドは食えない国だな」と思いました。
インドは長年に渡り中国と国境問題で揉めています。
インドが中国からの攻撃を受けた際に唯一助けてくれたのがロシアです。
インドもロシアのウクライナ侵攻に全面的に賛成してるわけではないのですが、歴史的な背景もありロシアを切り捨てることはできない状況なのです。
中国との関係もまだまだ問題がある中で、西欧諸国や日本がどれだけインドを助けてくれるのかわからない状況です。
そんな中で友好関係を保ってきたロシアとの関係を切れないのは当然です。
また、インドは経済成長をするにしたがって、東南アジアや南米などの第三国で作る「グローバルサウス」にも参加しており、第三国のリーダーとしてふるまっています。
インド国内にはカースト制度や弱者への理不尽な差別、暴力、女性へのレイプなどがまだまだ横行七得るのですが、それらを西欧諸国から「人権問題」として内政干渉されたくないと思っています。
でも、西欧諸国の恩恵は受けたいので、クアッドにも加盟。
インドの歴史や地政学的な状況を考えれば、西欧諸国ともロシア・中国とも一定の良い関係を保っておきたいのは当たり前の話で、それをうまくバランスを取りながら「中立」という名の立場を保っているのは仕方がないことだと思いました。
ただ、インドは自分たちの状況次第で手のひら返しをすることも多く、単なる「中立」ではないこともこの本から読み取ることができました。
本当にインドは「食えない国だな」という印象を持ちました。
どこに信頼を置いてどのように付き合っていくべき国なのか、良く考えていかないと思わぬしっぺ返しを食らうことになるのは明白なようです。
そのような国と今後どのように付き合っていけばいいのでしょうか?
この本でも書かれていましたが、インドに対して情をかけることをせず、徹底したビジネスライクな付き合いをインドとはすべきだと思います。
情に流されてインドに良くしても状況次第ではすぐに裏切られるでしょうし、徹底したビジネスの関係として付き合っていくのが一番でしょう。
ビジネスの関係と割り切って付き合っていくことが非常に大切だという根拠が分かりやく示されていて、今後インドとビジネスで付き合うことがある方にはとても参考になる本です。
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