出版日:2022年8月9日
ページ数:36ページ
なんとも言えない気持ちになる絵本でした。
36ページのとても短いお話です。
この絵本は「食育にも良い」と評されていますが、私はそうは思いませんでした。
主人公はもうすぐ食べられてしまう牛です。
子牛の頃に母牛と引き離されて他の牧場で太った高い肉牛になるように育てられました。
もうすぐ出荷されることが決まった「ぼく」は電車に乗ってお母さんに会いに行きます。
お母さんが他の子牛たちと幸せそうに過ごしている様子を見て、「ぼく」はお母さんに声をかけずに帰ります。
「お母さん、幸せそうだな。悲しませるために来たわけじゃないや」と。
電車に乗って帰る「ぼく」に気付いたお母さんは電車を追いかけます。
2頭は話すことはないけれど、一瞬だけお互いの顔見て察します。
もうすぐ食べられる「ぼく」 にもいろいろな夢があって、スリムな馬になって草原を走ってみたかった、動物園の動物みたいにみんなに愛されたかったと思い返します。
牧場でまるまると太らされて誰にも知られずもうすぐ食べられてしまう「ぼく」
食べられる前にお母さんに会いたかった「ぼく」
なんだかとても辛い気持ちになりました。
この絵本の最後は次のように締めくくります。
せめて ぼくをたべた人が
自分のいのちを 大切にしてくれたら
いいな
「もうじきたべられるぼく」より
おそらく、最後の部分が「食育に良い絵本」と位置付けられた理由だと思います。
人は牛や豚などの命を頂いて生きているから、自分の命も粗末にしてはいけないよというように解釈したのでしょう。
でも、これは本当に最後のページの文章だけであって、そこまでのプロセスを考えると、動物も人も死ぬ間際の最後の時には、「おかあさん」に会いたくなるんだなと実感しました。
刑事ドラマでも病気をテーマにしたドラマでも最後に会いたくなるのは「おかあさん」
これは不変のテーマなんだろうなと改めて思いました。
とても短い絵本ですが、いろいろ考えさせられる物語で心をわしづかみにされるような気持ちになりました。
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