ダニエル・ソカッチ「イスラエル 人類史上最もやっかいな問題」

ノンフィクション

出版日:2023年2月25日

ページ数:385ページ

イスラエル・パレスチナ問題は長年に渡って最も有名で全く解決の糸口が見えない問題のひとつです。

人種、宗教、国土の問題が複雑に絡み合った歴史があるため、中東から離れた日本に住んでいる私たちにはなかなか理解が難しい部分もあります。

2023年10月にもっとも最近の両国間での攻撃が始まり、ますます状況が難しくなっていくことを感じています。

今までにもイスラエル・パレスチナ問題についての本はいくつか読んできたのですが、他の本も読んでみようと思いました。

あらすじ

イスラエル・パレスチナの歴史から始まり、現在起きている両国間の問題の本質まで説明している本です。

著者はユダヤ系アメリカ人で長くイスラエルの民主主義を達成する活動をしているNGOのCEOです。

彼自身がユダヤ系であるため、ユダヤ寄りの説明になるのかと思いきや、すべてニュートラルな立場と視点で書かれた本です。

ユダヤ民族の歴史、どうしてユダヤ人がもともとパレスチナがあった場所にイスラエルという国を作ったのか、そのことによってどのような問題が起きているのか、それを解決するために今までに世界が行った努力など、時系列で分かりやすく説明されています。

人種の問題、宗教の問題、建国(国)の問題等、それぞれのカテゴリーについても分かりやすく説明されています。

この本を読もうと思った理由

大学でも中東問題の授業を履修し、その後も何冊かの本を読みましたが、イマイチ分かりませんでした。

どの本も偏っていることが多く(イスラエル擁護派だったり、パレスチナ擁護派だったり)、どちらかに肩入れしてる本が多く、「本当はどうなのか」が分かりませんでした。

もっとニュートラルな立場で客観性を保った、なおかつ分かりやすい本が読みたいと思い、この本を読んでみました。

(中東問題の本(特にイスラエル・パレスチナ問題)は問題自体が複雑なため、解説本も難しいものが多かったです。)

この本は「分かりやすい」という評価が多かったため、読んでみました。

感想

とても分かりやすい本でした。

ユダヤ人もパレスチナ人も、宗教の聖典に「この地(エルサレム)に住んでいた最初の民族はユダヤ人/パレスチナ人」と書かれていることが、もともとの発端。

その文言を元に「ここはユダヤ人の土地だ!」「いや、ここはパレスチナ人の土地だ!」という土地を巡る争いに、宗教や人種問題が複雑に絡まって今の手の施しようのない状態に至ったことがよく分かりました。

確かにどちらの民族にとってもエルサレムがとても重要であることは分かるのですが、ユダヤ人のナチスによる虐殺という悲惨な歴史があるとしても、もともと「パレスチナ」という国があった場所にいきなりユダヤ人が来て「イスラエル」という国を作ってしまうのはどうなのかなというのが私個人としてはなんとも言えない気持ちになりました。

それぞれ言い分も、悲惨な歴史もあるのはわかりますが、こんなに時間が経つ前にどうにかできなかったのかなと思いました。

(この本を読むと、どうにもできなかった状況や理由は良く分かります。)

イスラエルとパレスチナの間には過去に和平協議を行っていますが、解決には至りませんでした。

アメリかがイスラエル寄りなのもこの問題を複雑にしている原因の一端であると言えます。

日本から遠く離れた国の問題ですが、イスラエルが中東に与える影響は大きく、この問題が難しくなればなるほど、原油を輸入している日本にも大きな影響があることがよく分かりました。

「遠く離れた国の複雑な問題だから関係ない」ではなく、一読すべき本だと思います。

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