天才ピアニストの壮絶な努力を垣間見る本-「終止符のない人生」 反田恭平

エッセイ

発売日:2022年7月21日

ページ数:212ページ

ピアニスト反田恭平氏のことを知ったのは、ショパン国際ピアノコンクールで第2位を受賞したニュースがきっかけでした。

国際的なコンクールで受賞したそれまでのピアニストは、ほとんどが「真面目で優秀」という正統派な雰囲気の方がほとんどだったと思います。

受賞の様子を見て度肝を抜かれたのは、長髪で「サムライヘア」にしている反田氏の姿だけではなく、それまで見てきた「真面目一辺倒」なピアニストとは一線を画す雰囲気でした。

不真面目とは違うのですが、柔軟で幅がある雰囲気がとても素敵だなと思いました。

とても気になったので反田氏のXをフォローして活動の様子を見ていると、若手の養成に力を入れていたり(反田氏自身も若いのに)、クラシック界を盛り上げていこうとする活動を積極的に行っていて、とても驚きました。

「音楽家としてお金を稼いで食べていけるようにする」ということをきちんと考えていて、実直で凄いなと思いました。

そんな反田氏の自伝を読んでみました。

有名な国際ピアノコンクールで受賞するようなピアニストは、子供の頃から英才教育を受け、ピアノ一辺倒、真面目で品行方正というイメージしかありませんでした。

しかも実家が裕福でお金のことを気にせず生きていけるという勝手な偏見もありました(笑)。

もちろんそういう方もいらっしゃると思いますが、反田氏は転勤族のサラリーマン家庭に生まれ、親兄弟や親戚も音楽家ではありません。

幼少期から音楽のずば抜けた才能はあったのですが、決して両親が音楽教育にものすごく熱心だったわけではなく、むしろお父様はピアニストになることには反対でした。

(普通にサラリーマンになることを望んでいたようです。)

お母様はピアノ教室の先生に「息子さんは才能ありますよ」と言われ、東京に引っ越した際に桐朋学園の音楽教室に反田氏を通わせいましたが、決して「練習しなさい!」とか「音大目指しなさい!」と強制することもなく、比較的自由に好きなようにさせていました。

反田氏は子供の頃はサッカー三昧、夢はプロサッカー選手になることで、ピアノはあくまでも「趣味」だったそうです。

ご本人の意思とは関係なく、音楽の才能は素晴らしく、またお母様が桐朋学園の音楽教室に反田氏を入れるという正しい選択をしたため、順調に才能を伸ばしていきました。

中学時代はやんちゃだったと書かれていますが、それでもピアノをやめなかったのは本当にピアノが好きだったんだろうなと思います。

桐朋学園大学音楽学部に進学した後、ロシアの国立モスクワ音楽院に留学。

国立モスクワ音楽院なんて超一流じゃん、さぞかし素晴らしい施設で恵まれた環境なんだろうなと思っていましたが、学生寮はオンボロ、練習用ピアノもオンボロ、外国人学生は厳しいロシア語の授業を課され、その上ピアノのレッスンもしなければならない状況だったそうです。

ピアノさえ上手ければいいわけではなく、厳しいロシア語の授業について行けなくて脱落する学生もたくさんいたそうです。

こういう話を読んでいると、音楽の才能があればすべて上手くいくわけではなく、やはり本人の多大な努力(ピアノに限らず海外での生活に適応する努力)も必要なのだなと改めて思いました。

また、国立モスクワ音楽院の学費も、その後のポーランドワルシャワ音楽院の学費もご自身ですべて工面しており、コンサートやいろいろなイベントでお金を稼ぎ学費に回していたり、反田氏は本当に「努力の人」なんだなと驚きました。

親やスポンサーに頼るのではなく、自分で「音楽家としてお金を稼ぐ」という意識が非常に高い人で、そういう甘えのなさが凄いなと思いました。

本の中盤はショパン国際ピアノコンクールで2位に輝くまでの経緯を詳しく書かれていますが、楽曲のプログラム構成までピアニスト自身が行うことを初めて知りました。

反田氏はクラシック界に改革をもたらす人だなということがこの本を読んで良く分かります。

オーケストラを結成したり、若手の育成に力を入れたり、レーベルを立ち上げたり、ネットでのコンサート配信を行ったり、本当に様々な活動と努力をしています。

音楽家としてお金を稼いで食べていけるようにする、日本にもっとクラシック音楽を広めるという目的のために、本当に様々な活動と努力をなさってる方で頭が下がる思いでした。

「音楽家なんて、サラブレッドで裕福な家庭の子供がなってるんでしょ」という偏見を取っ払ってくれる、とてもすごい本でした。

また、いくら才能に恵まれていても努力は必要であることを改めて認識した本でした。

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