「マフィアの島」ではない今のシチリアを知ることができる本-「シチリアの奇跡」島村奈津

ノンフィクション

発売日:2022年12月19日

ページ数:240ページ

昨年からイタリア語を学び始めました。

イタリア語を学んでいる割には相変わらずあまりイタリアに興味がなく、このままではいけない。。。と思ってました。

世の中には「シチリアレモン」「シチリアオレンジ」のアイスクリームやジュースが溢れていますが、シチリアと言えばいまだに「マフィア」のイメージが強い。

シチリアについてなんにも知らないなーとふと思い、読んでみました。

「シチリアと言えばマフィア」というイメージが強いシチリア島。

映画「ゴッドファーザー」の影響もあり「マフィアの島」というイメージが強くなってしまったシチリアが、有機農業と観光の島になっていくためにマフィアと戦い続けた歴史を書いた本です。

昔ほどマフィアによる暴力や殺人は減ったものの、今でもマフィアの影響力は大きくシチリアの人とマフィアの戦いが続いています。

もともと気候や土地に恵まれ、農業が盛んで風光明媚な景色に恵まれたシチリア島はマフィアの土地買収や不正取引、みかじめ料などに人々は苦しんできました。

それらのマフィアの嫌がらせに抵抗した人たちはさらなる嫌がらせや暴力を受けたり、殺されたりしてきました。

マフィアによる恐怖と脅しからいかに人々が立ち上がり、マフィアとの戦いを続け、有機農業と観光の島として、マフィアとの戦いの軌跡を知ることができる島として復活していきます。

166年間に渡りマフィアとの戦いを続けており、今でも完全にマフィアを排除できたわけではありませんが、有機農業で栽培した果物やオリーブなどを使った加工品などの生産にも力を入れています。

シチリアの根深い問題が良く分かります。

またシチリア人の諦めない心やマフィアを排除して健全な島にしていこうとする命がけの努力を知ることができる本です。

イタリアマフィアと言えば、マフィア同士の抗争だけでなく、一般人まで巻き込んで殺し合いをしてしまう残虐なイメージがあると思います。

映画「ゴッドファーザー」では「そういう極悪非道のイタリアンマフィアでも家族の絆や愛情はあるんだよ」という部分が強調されてもいましたが、この本を読む限りそんな生易しい話ではないということがよく分かりました。

シチリア島は昔からマフィアによる商店へのみかじめ料や立ち退きなどの締め付けが酷く、「開発」という名のもとにオリーブやオレンジを栽培していた畑を潰し、無理なリゾート開発などを繰り返してきました。

その土地買収やみかじめ料に従わない一般人に対してもマフィアは酷い嫌がらせや暴力、場合によっては殺人も行ってきました。

恐怖による支配を続けてきたのです。

そこからシチリアの人々が立ち上がり、有機農業と観光をメインにした島づくりを行い、現在ではそれが成功を収めようとしています。

ただ、マフィアを完全に排除できたわけではなく、今でもマフィアの影響があるというのには驚きました。

この本ではシチリアのマフィアについて詳しく書かれていますが、正直、日本の暴力団よりもタチが悪いなと思いました。

日本の暴力団も法律が改正されてからはすっかり静かになっていますが、それでも一部では影響力があると思われます。

シチリアの場合は法律が変わろうが反マフィア団体がたくさん設立されようが、マフィアの活動は縮小されたとはいえ、日本の暴力団とは比べ物にならないほど悪質だとこの本を読んで知りました。

その中で人々が有機農業とそれによって生産された作物を使った品質の良い加工品を作り、シチリアの味を世界に広めていこうと努力している姿はとても素晴らしいと思いました。

最後のほうに書かれていましたが、今現在はアフリカからやってい来る移民難民が最初に到着するのがシチリア島で、その移民難民のブローカーをやっているのがマフィアだそうです。

根が深い問題であり、イタリアのマフィア問題はなかなか簡単に解決しないのだなと改めて考えさせられました。

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