日本の領土はどこまでなのか?を考えさせられる本-「誰も国境を知らない 令和版」西牟田靖

ノンフィクション

日本の国境についてご存じの方がどのくらいいらっしゃるでしょうか?

私はこの本を読むまで日本の国境をあまり意識したことがありませんでした。

日本には、よく知られている北方領土をはじめ、たくさんの国境の島々があります。

それらの島々には日本人が住んでいる島、他国の人が住んでいる島、無人島があり、国境の島々とはいえど状況は様々です。

それぞれの国境の島々を著者である西牟田氏が上陸または接近して、その島の様子を実際に見て、その島に住んでいる人や関係者にインタビューしたのがこの本になります。

この本は2002年~2007年に調査した第一部と2012年~2023年に調査した第二部に分かれています。

調査した国境の島は北方領土、沖ノ鳥島、竹島、対馬、硫黄島、小笠原諸島、与那国島、尖閣諸島。

これらの島を何度かに分けながら調べ上げています。

どの島々も非常に興味深かったのですが、特に関心を持ったのが竹島、対馬、与那国島でした。

竹島は無人島(韓国の政府機関が職員を常駐させているが)、対馬と与那国島は日本人が住んでいます。

対馬と与那国島は日本本土よりも韓国や台湾に近いため、対馬は韓国観光客の誘致に力を入れ、与那国島は台湾から観光客を呼び込みたいと考えている島です。

これらは一見、島の活性化にとって良いことのように思えますが(実際、対馬は観光業で生計を立てている人も多い)、対馬の例を見ると島の土地を韓国人に購入されてしまい、地権者が日本人ではない土地が増えているそうです。

また、尖閣諸島に見るような、海底に眠っている日本海域内の資源(レアアースなど)を巡る複雑な問題もあります。

「離島の経済にとっては韓国や台湾から観光客を呼び込んだ方がいいじゃないか」と単純に考えていたのですが、そういう簡単な話ではないということをこの本を読んで知りました。

島の土地が外国人に購入されてしまう、そのことによって外国人や外国政府による島の実質支配が起きる、海底にある資源を他国に持っていかれてしまうという深刻な状況に、離島はさらされているのです。

それに対し、日本政府は一部の島以外の対策は行っておらず、なんとも言えない気持ちになりました。

離島について何も知らず、「無人島なら特に他国に渡しても問題ないのでは?」と思っていたのですが、そこを拠点に戦時に攻め入ってこられることがあるということにも硫黄島の章を読んで実感しました。

都市部に住んでいると日本の離島のことや、どこまでが国境なのか(日本の主要4島(北海道、本州、四国、九州)までが領土だと思ってしまう)をよく知らずに生活していますが、日本の領土となる島々が実はたくさんあり、そこをきちんと守らないととんでもないことになるということを実感しました。

この本ではそれぞれの離島について細かく書かれており、そこに住んでいる人の思いや国のスタンスなども知ることができ、「国境とはなにか」を考えさせられます。

日本は平和な時期が長すぎて危機感がない部分がありますが、国境について誰もが一度きちんと考えなければならないと思いました。

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