高福祉国の図書館を知るのに最適の本-「フィンランド公共図書館」吉田右子/小泉公乃

ノンフィクション

出版日:2019年11月14日
ページ数:258ページ

日常的に図書館をよく利用しています。

海外旅行に行くと、必ずその国の図書館に立ち寄ることもしています。

建物、図書のレイアウト、雰囲気など国によって図書館も千差万別。

その違いが楽しくて必ず見学をしています。

フィンランドに初めて行ったのは、今から20年以上前。

最近の北欧ブームのずっと前のことですが、その当時からマリメッコやイッタラなどの北欧ブランドは人気があったし(当時から値段は高かかった)、高福祉の国として有名でした。

当時も学費が大学までずっと無料ということや、高齢になって介護が必要になっても無料でホームに入居できて必要なケアを受けられるということはよく知られていました。

その分、税金が高いのですが、その税金が何に使われているのかがはっきりしていて、非常に透明性の高い政治を行っている国だなと当時から思っていました。

2019年にフィンランドの首都ヘルシンキに大規模な図書館ができたことをネットで知り、建築の素晴らしさだけでなくフィンランドの図書館システムについて興味が湧きました。

高負担高福祉の国の公共図書館だからさぞかし凄いんだろうなあと興味津々でいたところ、この本に巡り会いました。

フィンランドではヘルシンキのような都市部だけでなく、ラップランドのような地理的に辺鄙な場所も平等にチャンスを得られるようにというコンセプトで図書館運営がなされています。

各図書館が図書を保有するのではなく、どこに住んでいても本が借りられるように図書館間で図書の配送が行われています。

なので、常に図書が国内を巡回しているような感じなのです。

また、図書館まで遠くて行くことができない人のために移動図書館のシステムもよくできていて、どこに住んでいても図書にアクセスできるという仕組みがよくできています。

図書館というと、「本を借りる」「子供のための朗読会がある」だけという印象ですが、フィンランドの図書館には規模の大小はあるにせよ、メーカースペースというものがあります。

3DプリンターをはじめとするPCやその他の設備を無料で利用して作品を作ることができたり、音楽スタジオがあってそこで音楽を録音できたりするのです。

あらゆる人にあらゆる機会を与えるという目的を図書館が担っています。

フィンランドを訪れたことがある方なら知ってらっしゃると思いますが、ヘルシンキやエスポーなどの都市部は民間の商業施設も娯楽もありますが、地方の小さな町になってしまうと本当に辺鄙な場所です。

そのような辺鄙な場所では3Dプリンターを使いたいと思ってもなかなか使うチャンスに恵まれないでしょうし、デザイン系のソフトなどもなかなか使うチャンスに恵まれません。

フィンランドの図書館では個人ではなかなか使うチャンスに恵まれない設備でも、地方の不便な地域に住んでいても図書館でそれらを体験できる、利用できるということが凄いなと思いました。

メーカースペースで使用する材料も無料。

日本の図書館がフィンランドのようになってほしいかどうかは別ですが、日本でも不便な地方の地域でもっと図書館を介したサービスができるのではないのかなと思いました。

海外の図書館がどのようなものなのか、フィンランドのような高福祉国の図書館がどのように国民に貢献しているのかを知るのに最適の本だと思います。

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