発売日:2025年1月29日
ページ数:256ページ
以前はミステリ小説をほとんど(いや、まったく)読みませんでした。
なんとなく難解な気がして、面白さがよく分からなかったのです。
初めて読んだミステリ小説がこの「世界でいちばん透き通った物語」の初刊。
これはその続編になります。
ミステリ小説というと、「殺人事件が起こり、その謎を解いていく」というのが王道だと思うのですが(古い?)、この話には殺人は出てきません。
登場人物が亡くなるわけではないのですが(といっても直接的な死ではなく、関連してほのめかすような死は出てきます)、殺人ではないし、グロい表現もありません。
「世界でいちばん透き通った物語」の初刊は、ストーリーや技巧も凄かったのですが、それだけでなく文字の配置や最後のページで物理的に(本のページをめくることによる)謎解きがあり、本当に衝撃的でした。
それまでほとんどミステリ小説を読まなかった私がミステリにハマるきっかけの本でした。
初刊は巻末できっちりストーリーが終わったので、まさか続編が出るとは思いませんでした。
嬉しい誤算でした。

続編ということで初刊の続きなので、初刊の内容も入ってきます。
が、初刊を読んでいなくても十分に楽しめるミステリでした。
主人公の藤阪燈真は有名作家の愛人の子として生まれます。
初刊では母子家庭で母親と平穏な暮らしをしていたのですが、母親が亡くなり有名作家の父親から連絡があり父親の遺作となる作品の謎を解いていくことになります。
それをきっかけに藤阪燈真は作家デビューし、賞も受賞し、推理小説協会に属することになります。
この続編では、とある作家が亡くなったことにより推理小説協会がその作家の追悼企画を立ち上げたことにより様々な事情や謎を解き明かしていくことになります。
この続編の凄いところは、主人公の藤阪燈真に直接起きたことや謎を解いていくわけではなく、ミステリ専門誌に発表された作品の謎を解読していくことです。
作中作品(ミステリ専門誌に発表された小説)の謎を解くことを7割くらいこの本の中で行っていて、その斬新なアイディアに驚きました。
そして、この作中作品の謎はある人を守るための嘘から始まったことであり、その人を傷つけないために何人もの人がとある出来事を隠すためにできたミステリであることが最後に分かります。
作中作品も非常に良くできたミステリ小説になっていて、グイグイ引き込まれていきます。
1冊で2度おいしい内容になっていて、本当に良くできている。。。。と唸ってしまいました。
読みやすい文章で、ミステリにありがちな登場人物の多さも気にならず、登場人物や状況の整理は非常にしやすい作品です。
私がミステリを読むようになったきっかけの小説でもあるので、ミステリをしっかり読んだことがない人や、ミステリに興味があるけど何を読んだらいいのかわからない人におススメの作品です。
コメント