翻訳者の経歴に興味があって読んだ本-「魔法のルビーの指輪」イヴォンヌ・マッグローリ

小説

発売日:2024年7月25日

ページ数:324ページ

小学校高学年向けのアイルランド児童文学です。

この本を読んでみようと思ったのは、翻訳者の加島葵さんの経歴が非常に興味深かったからです。

加島さんに興味があって読んでみたのですが、とても面白い物語でした。

11歳の誕生日におばあさんから「魔法のルビーの指輪」をもらったルーシー。

二重になっていた箱の蓋に書いてあった説明通りに指輪にお願いをしたところ、100年前の時代にタイムトリップしてしまいます。

その時代で出会った人たちとの友情やルーシーの成長を描いた物語で、臨場感たっぷりのお話でした。

ルーシーは100年前の時代から戻ってこられるのか?ドキドキハラハラの展開でした。

単なる冒険物語ではなく、アイルランドの歴史やその時代の背景が書かれていて、日本人には馴染みが薄いアイルランドの歴史にも触れることができます。

300ページ強の本でしたが、あっという間に読み終わってしまいました。

この本を読むきっかけになった翻訳者 加島葵さんですが、おひとりの翻訳者の名前ではなく11名の翻訳グループのペンネームなのです。

お茶の水女子大の同級生だった11名が最初はサークルのような形で始めた翻訳。

その翻訳を40年以上続けて何冊も児童文学を出版なさいました。

現在、「加島葵」さんは全員80代。

仕事や結婚、ご自身や家族の病気やさまざまな状況がありながらも、定期的に集まり翻訳活動を続けてきたそうです。

高齢になったことにより何人かは体調を崩されたり、年齢と共に翻訳の活動が難しくなったため、この「魔法のルビーの指輪」が最後の翻訳作品になるそうです。

このことを最近ニュース記事で拝見し、加島葵さんの年代の女性が翻訳をずっと続けてきたことの大変さを考えると凄い努力と継続力だなあと思いました。

主人公ルーシーの子供らしさやいきいきとした感情表現、児童文学というジャンルならではの分かりやすく違和感のない表現など、物語の面白さだけでなく翻訳のすばらしさのおかげでスイスイ読むことができました。

なかなかアイルランドの児童文学に触れる機会がありませんが、アイルランド独立の背景になる歴史お書かれた本書は一読の価値ありです。

子供だけではなく、大人も十分楽しめる物語でした。

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