日本に8人しかいない珍しい仕事のことが分かる本-「切手デザイナーの仕事」間部香代

ノンフィクション

出版日:2022年10月11日
ページ数:192ページ

切手が好きでたまに購入しています。

最近の切手は色使いもデザインも素敵なものが多くて、「日本郵便やるなあ」と思っていました。

まさか、切手デザイナーがいるとは思いもしませんでした。

切手のデザインは外注で外のイラストレーターさんにお願いしていると思っていたのですが、なんと、日本郵便社内に切手デザイナーの社員がいることをこの本を読んで初めて知りました。

しかも、全国で8人のみ。(全員、本社の社員です)

もちろん一部は外注しているようなのですが、ほとんどすべての切手のデザインはこの8名のデザイナーが行っているのだそうです。

「切手デザイナーって、どんなことやるの?」と興味を持ち、この本を読んでみました。

1年に40件程度発行されている特殊切手も普通切手もすべて、8人のデザイナーが手掛けているそうです。

どうしても華やかな特殊切手のほうが目立つので特殊切手にばかり興味を持ってしまいますが、1円や10円のようなあまり目立たない普通切手もすべて日本画、水彩画、粘土、写真、パソコンによるデザインなど、あらゆる手法を使ってデザインしています。

以前、浮世絵をテーマにした切手が出た際には、「昔と同じ切手じゃん」と思ったことがありましたが、トリミングのやり方、印刷方法などその時代に合わせて作成されていることを初めて知りました。

切手のデザインは特殊切手の場合は官公庁などからイベントの連絡などが来て、そのテーマに合わせて作成するそうです。

その場合、私は社内でジーっとデザインするのかと思っていたのですが、現場に取材に出かけたり、テーマに合う素材の写真を取ったり、専門家や専門施設から資料を取り寄せて勉強したりと、切手という小さな世界のデザインのためにものすごい労力が費やされていることを知りました。

また、切手であるがために、デザインされた絵には必ず郵便料金とNIPPONという文字が入るので、そのフォントとのバランスも計算しなければなりません。

デザインが終わったらそれで終わりではなく、間違いがないか何度も社外専門家のチェックを受けたり、その後の印刷の確認を行ったり、本当にいくつもの工程と多数の手間が存在することに驚かされました。

切手の印刷は国立印刷局が独占で行っているのかと思っていたのですが、毎回入札で決めているそうで、思っていたよりも開かれているのだなと思いました。

海外の印刷会社も入札参加しているそうで、驚きました。

この本では8名のデザイナーそれぞれの経歴や仕事への考え方だけでなく、印刷技術やさまざまな切手の種類などについても詳しく書かれています。

また、たくさんの写真が掲載されていて、そのどれもがとても素敵です。

「あー、この切手見たことあるなー。このデザイナーさんが作ったのかー」など、いろいろな思いを馳せながら読むことができる本です。

この本を読んていて思ったのは、切手のデザインというのは「いかに奇抜か」とか「いかに売れるか」よりも、「国民に受け入れられるかどうか」を非常に重視していることです。

切手も商品ですから売れることが重要と思いがちですが、日常的に使うものとして多くの人に受け入れられることに重点を置いていることが一般的なデザインとは違うのかなと思いました。

世の中に「切手デザイナー」という仕事があるということ、何気なく見ている切手は8人のデザイナーが様々な工夫を施して作っていることがよく分かるとても興味深い本でした。

自分が知らない世界がまだまだ世の中にはたくさんあるんだなと、改めて思わされました。

珍しい職業に興味がある方におススメの本です。

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