発売日:2013年10月28日
ページ数:375ページ
先日、ブログで紹介したペルーアマゾン先住民に関するドキュメンタリー「ノモレ」。
投稿を編集 “今も現存するアマゾン原住民を知ることが良書-「ノモレ」 国分拓” ‹ 本とお供 — WordPress
とても興味深い内容で、文章もわかりやすく、「南米先住民についてもっと知りたい」と思い、同じ著者の本を今回読んでみました。
著者はNHKでドキュメンタリー番組を制作してるディレクター。
「ノモレ」の4年前に出版された本で、ブラジル先住民ヤノマミ族との150日間に渡る同居生活を書いた本です。
「ノモレ」は文明化された先住民が未知の先住民と遭遇し、政府やNGOなどと協力しながらどのように未知の部族を保護していくか、その過程を書いた本でした。
今回の本はヤノマミ族の生活、習慣、祭り、狩りや畑仕事などを、同居によってつぶさに観察、交流しながら、このままの姿を淡々と書いている本でした。
感動的に仕上げようとか、先住民を理解したフリが全くなく、とても良い本でした。

ヤノマミ族は推定2万5千人〜3万人の部族で、数十人〜数百人のグループに分かれてアマゾンで生活しています。
一定の人口を維持し独自の文化と風習を保ち続けているのは、先住民の中でもヤノマミ族だけだそうです。
ブラジル政府との交渉などがあるため、若い人数人を都市部に留学させポルトガル語を習得させたりしてるようですが、基本的にはヤノマミ族独自の言語を使っています。
この本では狩りや畑で得られた食糧のことや、女性を巡るトラブルなど、ヤノマミ族の日常を淡々と描いていますが、一番衝撃的だったのは生まれたばかりの子供を殺してしまうことでした。
ブラジル政府やNGOによる医療措置のおかげで出生児の死亡率がとても低くなったのですが、それにより「間引き」と思うような行為が発生しているのです。
原始的な生活をしており避妊しないので、妊娠は多い。
医療行為により死亡率が減るけど、狩りや畑の作物などの食糧では全員を養えるわけではない。
そうなると必然的に子供を間引きするほかない。
良い悪いの話ではなく、文明社会側からの医療行為によってバランスが崩れて、生まれたばかりの子供を殺さざるを得ないという状況が生まれました。
薬や医療措置を行うという、たったひとつの文明化社会の行為でさえも、先住民社会のあらゆるバランスをあっという間に崩れてしまうことを目の当たりしました。
文明社会に生きる私たちは
「病気なら薬を与えれば良い」
「子供が死んでしまったらかわいそう」
と簡単に思ってしまうけど、勝手な思い込みが結局は先住民を滅ぼしてしまうんだなと、恐ろしくなりました。
私たちの基準が全てではなく、先住民にとってのバランスを考えていかなければならないんだなと思いました。
人間も自然の連鎖の1つであることを思い知らされる本でした。
国分拓氏の本は先住民に関して本当に素晴らしい本で、秀逸な本だなーと改めて思いました。
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