発売日:2018年4月13日
ページ数:176ページ
以前、東京に住んでいたのですが、住んでいたのは台東区浅草界隈でした。
浅草界隈と言っても、むしろ吉原(現在の千束)に歩いて行けるエリアでした。
吉原界隈って、家賃が安いんですよ。
新築のマンションでも台東区の他の場所よりも安い。
いくつか物件見たんですが、その界隈の雰囲気が良くなかったのと残業で遅くなった時の治安の悪さが気になって、結局は別の場所にマンションを借りました。
せっかく近くに住んでいたので、昼間に何度か吉原に散歩に行って吉原神社などを参拝してきました。
吉原大門を過ぎてちょっと歩くと、今もそこはソープ街。
数十軒まとまってお店があります。性病専門クリニックも多数。
独特の雰囲気と店頭に呼び込みのお兄さんたちが立っていて、なんとも言えない空気を醸し出しています。
ただ、このお兄さんたち、観光客にとてもやさしいのです。
強引な呼び込みはしないし、観光客が吉原界隈で食事ができる場所を聞くと、おいしいお店を教えてくれます。
昔、吉原を守るように遊郭エリアの四隅に設けられていた神社が設けられていたのですが、火事で焼失してしまったこと、吉原で働いていた遊女の魂を鎮魂するために1か所に集められて祀られているのが今の吉原神社です。
「吉原、遊郭」と聞くと悲劇的な印象しかありませんが、別の角度からの歴史を知りたいなと思い、この本を読んでみました。

(現在の吉原大門。ここから少し歩くとソープ街が広がっています)
最近は鬼滅の刃 遊郭編がテレビで放送されましたし、2025年のNHK大河ドラマは吉原が舞台になっています。
最近は「花魁体験」というものまであるので、遊郭や花魁というものに対してなんとなくわかっている方も多いと思います。
遊郭はもともとは日本橋人形町の辺りに幕府公認として誕生します。
江戸の建築ラッシュで職人や様々な作業員が全国から集まり、男性過多の状態になります。
自然と今でいうところの売春宿がたくさんできるようになり、治安の悪化や人身売買が盛んになってきます。
そこで遊女屋の経営者の一人が幕府に掛け合って、「幕府公認の」遊郭を作ることを提案します。
幕府公認となれば、遊女屋側は箔がつくし幕府側は遊女屋に管理をさせて治安の維持や犯罪者の洗い出しなどができるようになり、お互いにとってメリットある事業として遊郭が誕生します。
ところが、幕府公認の遊郭とは別に、私営の風呂屋(表向きは風呂に入る店ですが、実際は売春宿)が乱立するようになり、どんどん人形町エリアは治安が悪くなっていきます。
幕府の締め付けも厳しくなり、最終的に幕府主導で今の浅草に近い場所に吉原遊郭ができます。
ここは浅草田圃と言われていた場所で当時は埋め立てをして島のような地形に作り上げ、そこに遊郭をまとめました。
この遊郭島のような場所に入るには長いたんぼ道を移動し、大門では厳しい検閲を受け、それでやっと入れたそうです。
吉原=風俗エリアというイメージしかなかったのですが、当時の吉原の料金はとても高く、幕府のお偉いさんや高級武士などしか行けなかったようです。
貸し切りなどにすると、一晩で100万円以上かかったそうです。(宴会などもやらないと花魁や高級遊女と一夜を共にすることができなかった。)
決まりも多く、そんなに簡単に遊べる気軽な場所ではありませんでした。
花魁も、最初は売られてきた子供など不幸な境遇でしたが、芸事の才能があると認められた者だけが三味線や踊り、文学などの英才教育を受け、花魁になるために血を吐くような努力をし上り詰めていきます。
そのような境遇なので、花魁の着物や持ち物などは江戸のファッションリーダー的に人気を博し、浮世絵や様々なもの(現在でいうところのグッズ)などが流行していきます。
江戸末期には、その高価な料金体系やもぐりの安い売春宿が蔓延してくることによって、高級遊郭としての吉原の時代が終わります。
いくら花魁が芸事に長けたファッションリーダーだとしても、吉原が高級遊郭で一般的な遊郭とは格が違うとは言っても、根底には貧しさから売られてきた子女が子供の頃(13歳くらい)からずっと体を売って借金を返してきたことには変わりはありません。
吉原の文化のすばらしさだけを語る風潮もありますが、それはちょっと慕うのではないかなと思います。
この本ではその辺の裏話(人身売買や遊女の末路)などもきちんと書かれており、吉原を忌み嫌うのではなく、いろいろな側面から知っていく必要があるなあと思わされました。
とても読みやすくてわかりやすい本で、花魁や江戸の様子が詳しく書かれた浮世絵などもたくさん紹介されていて、とても良い本でした。
現在放送中の大河ドラマの背景を知るのにとても役立つ本だと思います。
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